環境の変化に注意!!「老人性うつ」に備えよ
高齢化が進んでいるが、高齢者のうつ病「老人性うつ」が増えているのをご存じだろうか?
少し古いデータになるが、厚生労働省が2008年に発表した「男女年齢別総患者数」資料によると、60代~70代の女性の患者数が増加しており、患者数が最も多いのもこの層となっている。
つまり、現役の若年世代と比べても高齢者のうつ病は決して少なくないのだ。
では「老人性うつ」はどういう原因で起こるのか?
1つにはストレスが関係している場合が多いといわれている。
例えば、会社を退職してすることがない、子供が独立したことなどよる生活環境の変化、身近な友人や配偶者との死別、もちろん、ペットが亡くなったという場合も原因に含まれるそうだ。
さらには、老化に伴って病気にかかりやすくなったり、体力が衰えるなどの「喪失体験」がきっかけとなることも少なくないらしいが、高齢者特有の要因として、脳の機能低下があるとも言われている。
つまり、脳の血流が悪くなり、感情や意欲に関する機能が低下すると、うつ病を引き起こしやすくなるということだ。
これらの原因をかんがみれば、皆さんも、この先の人生で「老人性うつ」は誰にでも起こりうることなのだと認識したのではないだろうか。まさに、人生100年を健康に過ごすためには、この「心の健康」を維持することにも備えておくことが必要なことなのだ。
そこで、この「老人性うつ」の治療や予防に少し説明しておこう。
まず、治療は病院を受診し、通常のうつと同じように抗うつ剤の投与やカウンセリングが中心となるのだが、「老人性うつ」の場合は、若年層のうつ病とは異なり、遺伝的・内因的な要素の影響が少なく、そのかわりに生活の変化など環境的な要因が原因となることが多いので、環境を整えることも治療の一環となるといわれている。
そして、予防に最も効果的なのは積極的に人と関わりをもつことだという。
人はいくつになっても存在を認めてほしい、必要とされたいという欲求がある。前述したように、現役時代にバリバリ働いていたような人は、定年退職で生活環境が激変すると急にやることがなくなり、自宅にこもるようになると、「老人性うつ」を引き起こすきっかけにつながるので、早い段階から趣味を見つけておくとか、趣味や仕事の経験をいかしてボランティア活動に参加するようにしておくとよい。
人生100年を生きるということは、さまざまなリスクを早い段階でヘッジすることが求められるのだ。「老人性うつ」もその1つである。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)