自動車事故は高齢者だけの問題ではない・・・事故抑制の施策に期待
「高齢の親が今だに免許を手放さず心配だ…」。こんな声をよく聞く。
確かに、高齢者の車の運転事故が増えている。ただ、少し考えてほしい。
人口動態の変化で高齢者が増えていることに加え、若者のクルマ離れという実態を考えれば、事故を起こす人の比率として高齢者が目立つのは当たり前ではないのか?
私は常々そう感じてきたのだが、実際の調査データをみても、アクセルとブレーキのふみ違い事故も、免許取り立ての若年層にも意外と多いのが分かる。
つまり、事故は高齢者だけの問題ではないのだ。
とはいえ、高齢の親が事故を起こせば、その影響は子世代に及ぶことは想像に難くない。
親が事故を起こし、けが人を出したり、建物などを壊したりした場合、保険会社や被害者とのやり取りを親だけに任せるわけにはいかないだろうし、親の心のケアだって必要だ。
事故の報道を読むたびに、その家族はどんな思いでいるのだろうと気になってしまう。
実際、令和元年版の「交通安全白書」によると、75歳以上の高齢者が平成30(2018)年に起こした死亡事故は運転免許を保有する10万人あたりの換算で8・2件で、75歳未満の約2・4倍だという。
ただ、前述したとおり、若年層(16~19歳)が11・4件で最多で、決して事故は高齢者だけの問題ではない。
ちなみに、80歳以上が11・1件と続いている。
もっとも、人生100年時代、100歳まで運転することは考えにくいが、運転しないと生活ができない地域も多い。
高齢期の運転を安全にすることは、これからますます課題になってくるだろう。
今後は各自動車メーカーも装置の開発、販売に注力するという報道もあるし、自動車用品販売店のオートバックスなどでも「アクセルブレーキふみ違い装置」の販売が好調だと聞く。気になる人は問い合わせてみたらどうだろうか。
また、政府は高齢者の事故対策として、6月には高齢ドライバー専用の免許制度やアクセルとブレーキの踏み間違いなどを防止する装置の購入費用を補助する制度などの検討に入っているという。高齢化がさらに進むことを考え、事故を抑制する施策がさらに加速することを期待したい。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)