親の自動車運転、事故のリスクを減らす安全対策
近年、高齢者による自動車事故のニュースが目立ちます。
弊社のセミナーなどでも「高齢の親が運転していて心配」という悩みを聞くことが少なくありません。
実際に80~84歳で運転免許の保有者は約150万人、85歳以上では約56万人、合計すると200万人を超えています(平成28年末、警察庁交通局)。
特に75歳以上の高齢運転手に多いのは、「ペダルの踏み間違い」によるもので、他の年齢層の2~5倍の数字となっています。
ハンドルの誤操作では、24歳以下の若い運転者と、75歳以上の高齢者が多く、年齢を問わず注意力の低下が指摘されています。
(参考・交通事故総合分析センター 操作不適事故件数の推移 表1 操作不適事故の形態別事故件数 平成16年から平成25年まで)
事故の危険を意識しつつも、高齢でも運転を続けているのは、車が唯一の交通手段になっている場合があります。
買い物や通院にも、車がなければ生活が成り立たない地域も存在するのです。子供としても、実は「運転を辞めさせたら、家にひきこもりがちになり、認知症になってしまうのでは」という不安も存在しています。
とは言え、故郷の親が事故を起こせば、本人がけがをするだけでなく、他人にもけがをさせてしまったり、建物やガードレールなどを破損したら、子世代は親の代わりに事故対応をすることになります。
もちろん、事故を起こしてしまった親の心のケアも必要になります。
ペダル踏み違え防止装置やASV車利用で、誤操作事故を防止!
親世代の自動車事故を心配しているだけでは、なんの解決にもなりませんので、事故リスクを抑えるために、いくつか事故防止案を提案させていただきたいと思います。
たとえば、「アクセルブレーキ踏み違え防止装置」の設置や、自動ブレーキなどを搭載した先進安全自動車(ASV)の利用、「高齢ドライバー見守りサービス」の利用などです。
もっとも手軽にできる対策のひとつは、自動車部品として後付けができる「アクセルブレーキ踏み違え防止」のための装置の設置です。
装置のセンサーが、アクセルの異常な踏み込みを感知すると、車が発進しなくなるという装置です。踏み込み事故の多くは駐車場など道路以外の場所で発生する事が多いので、利用価値はありそうです。
価格も4万円前後からで、量販店で取り付けまでやってもらえます。
「アクセルブレーキ踏み違え防止」は後付の簡易タイプなので、より安全性の高いものを求める場合は、先進安全自動車(ASV)を利用するという手もあります。
ASVは、国土交通省が事務局となり学識経験者や自動車メーカーが知恵を出し合って開発しているもので、車に取り付けたカメラが前方の人や障害物を捉えて運転を制御してくれる、いわゆる次世代の車と言えるでしょう。
実用化も始まり、利用者も増えているので、買い替え時には検討してみてもいいかもしれません。
親の運転状況をスマホでシェア「ドライバー見守りサービス」
「車を買い替えたばかり」、「そこまで費用をかけられない」という方は、「高齢ドライバー見守りサービス」というサービスをご存じでしょうか。
これは、一言で言えば、「高齢ドライバーの運転状況を家族で共有できる」システム。
親の車に専用の機器を取り付けることで、家族の端末(パソコンやスマートフォンなど)に「速度・時間・位置・燃料情報」などの情報が送信されてきます。
そのデータを見ると、親がどんな運転をしているか、どの交差点で急ブレーキをかけたか?
どんな時間に出かけ、何時間(何分間)運転し、どのタイミングで急発進・急加速をするかなど様々なことがわかります。
「今日の運転、いつもと違ってあぶないな」と思ったら、親に連絡して注意を促すこともできるというわけです。
ほかにも、危険挙動発生メールや指定場所到着メール、現在位置確認などの見守りサービス、ヒヤリハットマップなどのレポートサービスや緊急時の駆けつけサポートなども付いているので、使い勝手がよさそうだと感じました。
ただ、親の立場、特に父親世代は、自分の運転にプライドを持っている人が少なくありません。
そのため、子供からこうした装置やサービスを切り出されたら、「今まで運転しているから大丈夫」と親子喧嘩の引き金にもなりかねません。
あるいは、「見張られている」と感じて不信感を覚えることもあるかもしれませんので、意思疎通が大切です。
お互い気持ちを伝え合いながら、親と自分の生活を守るための備えを進めていきたいものです。
平成28年末運転免許保有者数
年齢別、男女別運転免許保有者数の構成率
https://www.npa.go.jp/toukei/menkyo/index.htm
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
参考:警察庁交通局「運転免許統計_平成28年版」
https://www.itarda.or.jp/itardainfomation/info107.pdf
操作不適事故件数の推移 表1 操作不適事故の形態別事故件数
自動ブレーキなどを搭載した先進安全自動車(ASV)
http://www.mlit.go.jp/jidosha/anzen/01asv/japanese/practical.html
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)