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ヤングケアラー

2018-11-22
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「ヤングケアラー」という言葉をご存知だろうか。
親や祖父母の介護をする10代から20代の若者が増えており、社会から孤立したり、進学をあきらめたりしていることが問題になっていると言うのだ。
私はこのヤングケアラーという言葉は初耳だったので驚いたが、もともと、祖父母を介護する両親の苦労を見て、介護の世界を目指す若者がいることは知っていた。
だが、そのヤングケアラーのA氏の話を聞く機会があり、その深刻さを改めて認識させられた。

A氏は30代前半だが、10代後半から20代のほとんどを母親の介護に費やしてきたという。母親はA氏が高校生のときに難病を患い、身体症状だけでなく精神面にも問題を抱えた。効果的な治療法がなく、母親の病状は少しずつ悪化していったため、A氏は専門学校卒業後就職することなく、母親の介護に専念していたという。

幸い父親が働いていたため生活が困窮することはなかったというが、20代後半になったころ、父親の定年が近づいたこともあり、専門学校で学んだ知識を生かせないかと就職活動を試みたが、職歴がないことがネックとなってなかなかうまくいかない。
何社も落ち続けた末にA氏は面接で母親の介護のことを言う決心をしたという。

ただ、「カミングアウトしてみると、意外にも介護経験を評価してくださる人が多かった」とA氏は語ってくれた。
就職が決まった会社の人材採用担当者はA氏の両親に年齢が近く、介護大変さを知っていたのでは?と推測することもできるが結果、長いブランクがあったにもかかわらず、就職することができた。
今は、定年を迎えた父親がA氏とバトンタッチして介護を行っているとのことだったが、A氏のような家族は幸運にもうまく行ったケースではないだろうか。ヤングケアラーが増えた場合、一度も仕事をしたことのない若者が介護の末に希望の仕事に就ける可能性は極めて少ないだろう。
介護離職も問題だが、ヤングケアラーについても今から対策を打っていくべきだと節に願う。

=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。

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このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)

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