高齢期の一人暮らしのリスクを回避する(その1)
1人暮らしで介護が必要な状態になったとき、身近に介護してくれる家族がいなければ、公的介護保険サービスを利用しても自宅での独居生活が困難になる場合がある。国立社会保障・人口問題研究所による推計では、2040年には高齢者世帯のうち単身世帯、つまり1人暮らしの高齢者世帯は、全高齢者世帯のほぼ4割に迫っている。今後、切実な社会問題となることは間違いない。
いまや、生涯未婚の独身者も増加している。たとえ既婚でも、熟年離婚や伴侶の死別などで1人暮らしを余儀なくされる高齢者が多くなることは確実だ。
「気ままな1人暮らし」は若い時代だからこそであり、高齢期の1人暮らしは気ままどころか「気がかり」なことばかりになるだろう。「何かの時に誰が助けてくれるのか」「誰が介護してくれるのか」「寂しい」、そして「孤独死の心配」など、不安だらけである。 それ以前に「特殊詐欺」や「悪徳商法」のカモにされる恐れもあり、老後のリスクばかり思い浮かんでしまう。
当然、国もこの状況を無視することはできない。11年には「高齢者の居住の安定確保に関する法律(通称:高齢者すまい法)」を全面的に改正し、同法に基づき国土交通省所管で「サービス付き高齢者向け住宅(通称:サ高住)」の登録制度を創設。サ高住の民間事業に助成金を投入して整備してきた。
サ高住は多くの参入企業を得て広がっている。簡単に言うと、「まだ介護はほとんど必要ない1人暮らしの高齢者の孤独・孤立を解消するための賃貸住宅」という位置づけである。ここでいう「サービス」とは「安否確認」と「生活相談」のことを指している。だが、福祉施設や介護施設ではないことは理解しておきたい。
サ高住は元気なうちから入れる施設として、老人ホームより気軽な住まいであり、高齢期の1人暮らしにおけるリスク回避には一定の効果が期待できる賃貸住宅と言える。ただし、選び方で善し悪しが変わるので、利用を検討する場合は「夕刊フジ×オヤノコト生活相談室」を利用していただきたい。
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=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)