高額老人ホームより…地域コミュニティーの再生を
この連載のタイトルは「人生100年 これから、どうする」だが、老後のことを考えるとどうしてもネガティブな話題が多くなってしまう。
例えば老人ホームだ。いくら「老後に備えよ」と言ったところで、入居一時金が数千万円という施設に誰もが入居できるわけではない。いわんや、人生100年となれば、100歳までの資金を担保しておかねばならないことを鑑みれば、ほんの一握りの人だけの施設になってしまう可能性すらあるのだ。
そもそも、私がこれまで老人ホームを取材していて、入居相談員や入居担当の責任者が口をそろえたように「そもそも僕らはウチのホームには入れませんよ」「こんな高額な入居一時金払えませんから」と語ることに違和感を持っていた。
冷静に考えてみれば、どこかおかしな話だ。本来、入居相談員は営業マンなのだから、自分自身が自信をもって勧められ、将来自分が入居したい(できる)と思えるような施設でなければ本当の意味でのセールスなどできないのではないだろうか。
そんな疑問がわいてきていたこともあり、私は常々「これからはシェアハウスのような住まい方が主流になる」と予測してきた。
その一例として愛知県にある「ゴジカラ村」を紹介しておきたい。残念ながら私はまだ訪ねたことはないのだが、愛知県長久手市の猪高緑地に接する雑木林の中にあり、社会福祉法人の「愛知たいようの杜」が運営している。
「生まれ育った場所の雑木林を何とか残したい」との創設者の強い想いから1981年に創設された。最初に幼稚園が建ち、隣に子供たちと高齢者が遊び交流するための民家が建てられ、今や広大な敷地に、特別養護老人ホーム、ショートステイ、ケアハウス、デイサービスセンターなどの高齢者福祉施設、幼稚園、託児所、古民家、カフェ、看護師・介護士を養成する専門学校などが点在していて、子育て世帯と高齢者が同居するシェアハウスもあるという。
ここには毎日、子供から高齢者まで、暮らす人や訪れる人を含めると900人以上が村の中を行き来している。さらにボランティアまで巻き込んで年間500人を超える人々が清掃や大工仕事、高齢者とのコミュニケーションに関わっているというのだ。
まさに、「昔ながらの地域コミュニティーの再生」。それこそが、人生100年時代に私たちがいきいきと暮らしていくために意識すべきことなのかもしれない。
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=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)