「自分のこと。ときどき親のこと。第8回~もしも自分が入院したら?」
前回、「子の世話にはならない」と希望するなら、何がしかの準備が必要なのではないかと書きました。
常日頃、私は「親の介護」のために「情報」を集めようと提案していますが、これはそのまま自分自身のためにも当てはまることです。
もしも、いま自分が入院したら…?
縁起でもないことを考えて悩む必要はありませんが、最低限の情報があると、そんなことになったとしても少しは焦る心を落ち着かせることができるでしょう。
まずはお金のこと…。
外来診療や入院診療により、医療費の自己負担額が高額とならないか…、心配ですね。こんな心配を軽減する制度は「高額療養費制度」。一定の金額(自己負担限度額)を超えた部分が払い戻されるというものです。
もし、医療費が高額になることが事前にわかっているなら、「限度額適用認定証」を提示する方法が便利です。
事前に申請を行い提出しておくことで、請求額に制度が適用され一時的な多額の現金支払いを軽減できます(70歳以上なら「高齢受給者証」を提示することで、限度額適用認定証の申請を行わなくとも、この高額療養費制度が適用されます)。
ただし、保険外併用療養費の差額部分や入院時食事療養費、入院時生活療養費の自己負担額は対象になりません。
では、もう少し自分が入院することを具体的にシミュレーションしてみましょう。親が入院したときのお世話で結構大変なのが「洗濯物」という声をしばしば聞きます。汚れものを持ち帰って、また持っていく…。親が遠方の病院に入院しているときは、特に負担となりがちです。
もしも自分が入院したら誰が洗濯物の世話をしてくれるのでしょう。ベッドから起きることができれば病院設置のコインランドリーを借りて自分で洗濯することもできるでしょう。それが叶わない場合は?
やはり家族がいる人は家族に頼むのが一般的のようです。
とはいえ、家族に頼むことをためらう場合も…。適当な人がいないケースも…。
病院によっては、クリーニング業者が出入りしていて下着1枚から洗濯を請け負ってくれるところもあるようです。また、入院時の買い物や洗濯を請け負う民間会社やボランティア団体もあります(入院時の付き添いはできません)。
結局選択肢は、自分でするか、家族にお願いするか、外部サービスを依頼するか。このことは、入院時の洗濯に限らず日々の生活全般に共通することだといえるでしょう。
どうするかは、その時に決めたらいいこととはいえ、シミュレーションしてみることで「お金を貯めよう」とか、「家族とのコミュニケーションをもうちょっと良好に保とう」とか、準備しておくべきことが見えてきます。
いずれにしても、「情報」が土台となるので、自分自身の将来に備えて、アンテナの感度を高めておきたいものです。
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- このコラムを書いた人:介護ジャーナリスト 太田差惠子(Saeko Ota)
- 介護・暮らしジャーナリスト NPO法人パオッコ理事長 AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)会員 京都市生まれ。高齢化社会においての「暮らし」と「高齢者支援」の2つの視点から新しい切り口で新聞・雑誌などでコラム執筆、講演活動等を行う。1996年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年5月法人化した。現理事長。2012年3月、立教大学院21世紀社会デザイン研究科前期課程修了。介護、ジェンダー、ワークライフバランスなどを総合的に学んでいる。個人サイトは「太田差惠子のワークライフバランス」著書に『老親介護とお金 ビジネスマンの介護心得』(アスキー新書)、『故郷の親が老いたとき』(中央法規)、『遠距離介護』(岩波ブックレット)など多数