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「自分のこと。ときどき親のこと。第11回~いつかは自分にも必要な「終活」」

2017-07-26
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「終活」といえば、いちばんに思い浮かぶのはお墓や葬儀のことでしょうか。確かに同世代以上の友人らと話しているとき、「つれあいの家族と一緒の墓に入りたくない」とか、「お骨は大好きな海に流してほしいと思っている」とかって話題は盛り上がりがちです。
いつかは必ず自分にも訪れる死。自分のためだけでなく、「こうして欲しい」という希望があるなら、“準備”しておくことが、弔ってくれることになる家族や親族を困らせない手立てになるともいえるでしょう。
一方、身も蓋もない言い方になりますが、死んでしまったらどんな墓に入ろうが、どんな葬儀をされようが自分では分からない?
死んでからのことよりも、生存中に、判断力が低下したりボケたりしたときにどうしたいか。こちらを考えておくことのほうが「自身の終活」にとってより重要なのではないでしょうか。法律に定められた役立つ制度もあります。
例えば、成年後見制度(*)の「任意後見制度」。
元気なうちに、将来判断能力が衰えたときには、誰に、何を手伝って欲しいか、どのようなケアを受けたいか等について、あらかじめ定めておくものです。
現状、親御さんが認知症になられて「法定後見」を利用するかどうか悩みつつ検討している子世代を見かけることがよくあります。判断力が低下し、契約行為が難しくなったり、悪徳業者に騙されたり…。が、簡単ではありません。手続きが煩雑なことに加え、誰を後見人にするか…。見解の違いから子どもが複数いる場合にはもめることも…。「任意後見制度」を利用すれば、事前に当人が決めるのですから、こうしたトラブルを避けることができます。
「信託」も自身の人生の終わりを自分で決める策のひとつとなりそうです。
「信託」といえば自分の財産を死後に計画的に家族へ継承するものと理解している方が多いようですが、それだけではありません。自身が生きている間に自分のために活用してくれるように信頼する第三者に託する仕組みもあります。委託者と受益者が同一人となるので「自益信託」と呼ばれています。
例えばあなたは賃貸アパートを経営していて、家賃収入が生活費になっているとしましょう。もし、認知症になったら…? アパート収入で有料老人ホームに入ろうという計画?
けれども、たとえあなたにお子さんがいるとしても、あなた名義の不動産を運用したり、売却したりすることはできません。それがアパートを信託財産とし、”信託契約”を結んでおくことで可能となります。受託者(信頼できるお子さんなど)が家賃管理と経費の支払い、維持管理を代行し、契約に基づきアパートの売却までも代行することができます。親族以外の第三者の方が良ければ、手数料を払って信託会社等と契約する方法もあります。
親の老いと向き合ったり、介護に携わったりしながら、自身がおこなうべき“終活”をシミュレーションしてみましょう。必要であれば制度やシステムを活用することも検討したいものです。
死んでからのことよりも、命あるときに安心して過ごせるようにすることのほうが情報収集や活動しがいがあるというものです。
*「成年後見制度」は精神上の障がいにより判断能力が不十分な方を法律面や生活面で支援する制度です。「任意後見制度」と「法定後見制度」から成り、前者は本人の判断能力が衰える前から、一方、後者は判断能力が不十分な場合に利用対象となります。

 

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このコラムを書いた人:介護ジャーナリスト 太田差惠子(Saeko Ota)
介護・暮らしジャーナリスト NPO法人パオッコ理事長 AFP(日本ファイナンシャル・プランナーズ協会)会員 京都市生まれ。高齢化社会においての「暮らし」と「高齢者支援」の2つの視点から新しい切り口で新聞・雑誌などでコラム執筆、講演活動等を行う。1996年、親世代と離れて暮らす子世代の情報交換の場として「離れて暮らす親のケアを考える会パオッコ」を立ち上げ、2005年5月法人化した。現理事長。2012年3月、立教大学院21世紀社会デザイン研究科前期課程修了。介護、ジェンダー、ワークライフバランスなどを総合的に学んでいる。個人サイトは「太田差惠子のワークライフバランス」著書に『老親介護とお金 ビジネスマンの介護心得』(アスキー新書)、『故郷の親が老いたとき』(中央法規)、『遠距離介護』(岩波ブックレット)など多数