家族で考えよう、備えよう、「認知症」は身近な病気です
みなさんは日本に認知症の方がどのくらいいるかご存知でしょうか。
厚生労働省の発表によると65歳以上のなんと推計15%。軽度や予備軍を含めると25%、実に4人に1人が認知症の可能性があるのだといいます。
決して他人事とはいえない認知症に私たちはどう向き合えばいいのでしょうか。
介護家族支援・相談に30年以上携わっている服部安子先生にお話を伺いました。
家族がアンテナを張れば初期症状はキャッチできる
認知症とは、
(1)著しく記憶が低下する
(2)認知障害により知的機能や判断能力の低下がある
(3)そのため日常生活に支障をきたす
という状態をいいます。
「うちの親、最近もの忘れが多いわ…」と思った方は、親をよく観察してください。もの忘れは年齢を重ねるにつれて誰でも増えるもの。それが加齢と認知症どちらのものか見極めるポイントは、記憶がたどれるか否かです。通常は自分の行動を順に追うと思い出します。ところが認知症ではそれができなくなります。記憶自体がすっぽりと抜けているようなら疑った方がよいかもしれません。
同じ話を繰り返す、手順を覚えられない、計算能力が衰えるなど子世代がキャッチできるサインは他にもあります。親世代の様子を観察しながら「認知症チェックリスト」を参考にして、気になる症状があれば早めにお医者さんに相談してみてください。
症状は十人十色専門医師のもとで治療を
ひと口に認知症といっても実はさまざま。よく知られているアルツハイマー型認知症をはじめ脳血管性認知症、レビー小体型認知症、ピック病といわれる前頭側頭型認知症などいろいろなタイプがあります。
たとえば前頭側頭型の初期では一見まったく正常な状態に見えます。会話もできるし、仕事もできる。ただ、前頭連合野の抑制能力が衰えます。社会的な地位がある人が痴漢や万引きをして世間を騒がせることがありますね。あれも実はこのタイプの認知症ではともいわれています。
また、硬膜下血腫、正常圧水頭症等は早期治療で治る場合もありますから、ぜひ認知症に精通したお医者さんを訪ねてください。
いざという時にかかる病院、治療費用はどう捻出するか、どんな行政サービスがあるか、施設はどう選ぶか…。備えあれば憂いなし。ご本人の希望も含め、普段からご家族で話しておくと安心ですね。
愛情をもって接すると家族の絆は途絶えない
認知症は誰もがなり得る身近な病です。一人で抱え込まないでください。
「任せられることは人に任せること。そうして、愛するエネルギーを温存すること」。
プロや周囲の手、施設に自治体サービスなど、地域には頼りになる"地域の力"がたくさんあります。
「家族だから自分たちで」という気持ちは素晴らしいのですが、介護生活は予想を超える困難なことが多く、想いとは真逆の残念な結果に終わるケースもあります。
介護の負担はやはり大きいので、ご家族が精神的・体力的に消耗することが少なくなく、共倒れになることもあります。
人の手を借りることにご家族が罪悪感を覚え、孤軍奮闘しないでください。
ご家族のイライラや張りつめた気持ちが伝わり、症状の悪化につながることも多々あります。 同様にやさしい想いも必ず届きます。
認知症の正しい知識と対応方法を学び、"かけがえのない人"として接してほしいと思います。その気持ちがご家族、ご本人どちらにも救いとなります・認知症になっても愛するエネルギーを温存してください。
それがご家族にしかできない、一番の介護なのだと思います。
社会福祉法人 浴風会 ケアスクール校長
服部安子 先生
「地域で暮らしていく」「ノーマライゼーションを具現化する」。その2つをめざして、老人ホームの立ち上げからケアスクールの校長という立場で介護家族支援・相談を30年以上続けている。
主な著書:『中高年からのしあわせライフ』学健書院、『働きながらできる家族の介護No.1~3』IEC通信教育教科書、『認知症の人といっしょに生きる』(DVD)中央法規など多数
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