コロナで日本の財政悪化
今から約100年前、1918~20年に流行したスペイン風邪は全世界で2000万~4000万人が死亡したとされ、日本でも38万人が亡くなっている。
このとき、スペイン風邪で子供を亡くした与謝野晶子は、「盗人を見てから縄をなうというような日本人の便宜主義がこういう場合にも目につきます」「政府はなぜいち早くこの危険を防止するために 多くの人間の密集する場所の一時的休業を命じなかったのでしょう」と、政府の対応の遅さを嘆いている。
このノンビリした国民性が今も変わらないと感じているのは私だけであろうか?
私は25年以上前の時点で日本の高齢化と人口減少が将来大きな問題になることを指摘したムック本が書店にあったのを鮮明に記憶しているが、果たして今でも本当のところ政府も企業もいわんや国民もどこまで危機感をもって対応しているのであろうか?
まさに、そこに今回の新型コロナウイルス感染症の蔓延(まんえん)である。
コロナ対策として補正予算が組まれ、2020年度の予算はその分を上乗せすると一般会計の歳出総額が190・2兆円、新規国債発行額は90・1兆円と過去最大。公債依存度は56・3%に悪化する見通しだ。
この連載のタイトル通り、いよいよ本当に「これから、どうする?」だ。
前述したとおり、既に高齢化と人口減少は世界最速で進み、これからさらに加速する。それだけでも大変な危機だと感じていたのだが、そんな中でのコロナウイルス感染症の蔓延だから、もともと借金大国の日本の財政はますます厳しくなり、この先の増税、社会保障制度などのサービス低下は否めないだろう。
すでに個人で対応できることではなくなっているが、とはいえ国はあてにならないだろう。経済産業省は2016年に「社会人基礎力」を提唱しているが、参考にしておきたい。
「社会人基礎力」とは、「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つと定義され、職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎力とのことだが、私が思う一番大事なことは、多様性を重んじ、地域で支え合って生きていく環境を作ることだ。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)