新型コロナという不安材料…公的介護サービスはますます限定的に?
今回の新型コロナウイルス感染拡大で、全国で介護事業所の休業が拡大し、そこで働く人たち、サービスを必要としている本人、要介護者を抱えた家族にとっては想定外の苦労を強いられることになった。
だが、これまでセミナーなどでも度々指摘してきているが、以前から公的介護保険の給付費は右肩上がりに増え、2025年(団塊世代全員が75歳の後期高齢者になる)には、その給付額は21兆円になると予測されている。つまりこの先、要介護者を抱える家族にとっては、公的介護保険は使えるサービスが限定的になることは容易に推測できると指摘してきているのだ。
まさに、要介護者の増加に歯止めがかからず介護保険がスタートした時点での給付費約3兆円が右肩上がりに増え続け、18年度には10兆円を超え、25年には20兆円を超えるというのだから、(国の財政状態が厳しい中で、社会保障費が拡大を続けていることまで頭に入れて考えれば)介護保険で受けられるサービスを限定的にせざるを得ないというのが国の実情というところだ。
ところが、さらに新型コロナという不安材料が増えてしまった。
知っての通り、国は対策として持続化給付金などさまざまな支出をせざるを得ないわけだが、それがあったとしても企業の廃業や倒産は加速度的に増えると想定される。
国庫はどんどん厳しくなり、金融機関に膨大な不良債権が生まれるだろう。そして、何とかしようと日銀による国債買い入れや政府による国債増発が進むと思われる。
しかし、日本の公的債務の残高は先進国の中でも最悪の水準であることをかんがみれば、その後相対的に日本国債の信用力は低下し、経済に大きな打撃を受けるのであろうことは言うまでもない。
これらのことから総合的に判断すれば、将来、公的介護保険で受けられるサービスは限定的になり、自費でさまざまな介護サービスを受けなければならない時代は目の前に迫っているかもしれないということだ。
これからの時代、「人生100年をどう生きるか?」を問われれば、その答えはシンプルだ。それは、1人1人がこれまでの考え方や生き方、方法論を180度転換せねばならないということに他ならないのだから。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)