先を悲観する前に「自分は何がしたいのか」を考える
新型コロナウイルスの影響で、生活保護を申請する人が急増したという。
コロナによって休業を余儀なくされた人は約600万人もいることをかんがみれば、3月に申請された生活保護の件数が2万件超、前年同月比で7・4%増えていることもうなずけるし、今後もさらに増えることは容易に推測できるだろう。
しかしながら、国の財政状況が厳しいことから、生活保護の審査は厳しくなっており、受給者数は減少の一途をただっていることも事実だ。
注目したいのは、生活保護を受けている世帯の55・4%は高齢者ということ。つまり、高齢になっても働き続け、生活を支えなければならず、それでもかなわず生活保護を受ける高齢世帯が年々増えているということだ。
まさに、テレビや新聞でうたわれるような「人生100年時代を謳歌(おうか)する」というような恵まれた人は、一部の高額所得者くらいしかいなくなるのがこれからの日本だと考えた方がいいのかもしれない。
私はこれまでも書籍や講演でも度々指摘し続けているが、このまま安穏としていたら未来の日本は高齢者に限らず、安心して暮らせる環境ではなくなるだろう。そもそも、日本は先進国であり、豊かな国であるという幻想も捨てた方がいい。
例えば、日本の相対的貧困率はG7(先進7カ国でワースト2位、ひとり親世帯に限定すれば、OECD(経済協力開発機構)加盟国35カ国の中でワースト1位なのである。
それではどうすればいいのか? このことに答えはないが、個人的な考えとしては、宮仕えではなく、自分の好きなことで生きることを考えてみるのも手だと思う。
私の知人で、かつて大手証券会社でバリバリと活躍していた人で、今はベンチャー企業などの顧問のような立場で活動している人が、今後は某農業法人に活動の場をシフトしたいと言っていたのが印象的だった。
その知人いわく、「これまでの人生では紙の上だけの仕事だったが、農業で体を使って仕事をし、収穫するというものづくりの楽しさを知った」とのこと。
先を悲観するだけでなく、「自分は何がしたいのか?」を一人ひとりが真剣に考え、思い切って飛び込んでみる文化を醸成することで、意外にも日本経済は活性化してくるかもしれない。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)