親が75歳を過ぎたら、介護離職をしないためにも早めの情報収集を
先日ある会社にて打ち合わせの際、最近東京に転属になったという新任のご担当者(50代・男性)と「親のこと」でお話しする機会があった。
その方は最近まで母親と地方で暮らしていたのだが、東京勤務の辞令を受け、慌てて母親の入居できる施設を探して上京したとのこと。たぶん、それまでは在宅でお母様を介護しながら、仕事をしていたのだろう。
お話しを伺うと、「何もわからない中で、暗中模索。ともかく大変でした」と、しみじみ語ってくれた。役所に行ってもなかなか要領を得ず、やっと探した施設でも、母親を入れてから「あれ?そんな話聞いてなかったな」というようなこともままあったらしい。
だが、一旦入居を決めた後では簡単には他の施設への転居も難しい。
転勤の期日も決まっていたので、「まあ、こんなものか」と自分自身に言い聞かせて納得せざるを得なかったというのだ。
「オヤノコト.ステーション」に相談に来られる方も、同じようなケースが多々ある。
当たり前のように言われるが「介護は突然やってくる」。
特に75歳を過ぎると要介護認定率が高まることは知ってのとおりだ。
厚生労働省の資料によれば、70歳~74歳の要介護認定率は6.2%なのに対して、75歳~79歳では13.7%と一気に跳ね上がる。65歳~69歳が2.9%であることをみても、75歳というのがひとつの分岐点になることは確かであろう。
いわゆる「健康寿命」も男性で71.45歳、女性で74.73歳であることを考えれば、親が70歳を過ぎ、75歳を過ぎたら「介護離職」への備えをしておくべきであり、そのことが自分や家族の生活を守ることにもなることは忘れないで欲しい。
前述の男性も、お母様を在宅介護されてきたと思われるが、それでも施設入居となると、様々な場面で戸惑うことがあった。やはり、万が一のために親が75歳を過ぎたら、情報収集などの準備をしておくことに早すぎるということは決してないのかもしれない。
親に介護が必要になった場合、在宅か施設入居のどちらかを選ぶことになる。たとえば、老人ホーム検索サイトなどで慌てて施設を探す人も多いだろうが、そこに記載されていることはホームの実態までを正確に伝えるには難しいこともある。
現在、満室なのではなく、介護を担う人手不足で満足のいくサービスが提供できないことを理由に、入居者の受け入れをお断りしているホームもあるそうだ。そのような状況で、自分たち家族に合ったよいホームをウェブなどの情報だけで見つけることは不可能だ。
そのときには些細なことでも、あとで役に立つ情報になっていく。
介護離職に備えるということは、様々な情報を集め、それを自分のものとして咀嚼し、事が起こった場合にどのように対処するかを決めておくことである。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)