難聴の放置は、認知症のリスクを高めることも
親の難聴を、補聴器などを使用しないでそのまま放置しておくと、認知症のリスクが高まるという。実際、厚生労働省の認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)でも、難聴は認知症の危険因子として挙げられている。
離れて暮らす親と会うのは年1回か2回、後は電話かメールでやりとりするくらいという人も多いので、もしかすると親の聴こえが悪くなっていることに気づいていない方も多いかも知れない。それに、多少聴こえが悪いと思っても「年齢のせいだろう」くらいに軽く考え対策をしないケースも多々あるのではないだろうか。
しかしながら、親の難聴が気になり始めたら、躊躇せず専門医または補聴器販売店に相談し、必要に応じて補聴器などの処方をしてもらうことをお勧めする。
だが、補聴器選び、厳密には「補聴器店選び」は慎重にすべきだ。最近は、補聴器購入にあたってのトラブルが年々増えているそうだ。
自分自身のことで恐縮だが、筆者の母親は60代半ばころから補聴器を使っているので、かれこれ20年超の補聴器ユーザーなのだが、私自身はこれまで母親の補聴器について特に気の留めることもなく、お店選びも、機器選びも口を出さず、ある意味本人任せにしてきたが、ここに来て「聴こえが悪い」ということからよくよく話を聞いてみて驚いた。
前述したとおり、20年を超える補聴器ユーザーでありながら、これまで満足できる補聴器に出会ったことが無いと言うのだ。60代で補聴器を使い始めた時、補聴器店で勧められるままに片耳で20万円を超える補聴器を作ったが、結果あまり聴こえの改善は見られなかったらしい。
だが、本人は「補聴器とはこんなものなんだろう」程度に諦めて、お店に交換などの申出はしなかったという。その後、頻繁に故障するので修理に持ち込むと、そのたびに2万、3万という単位で修理代がかかったが満足のいくものではなかったらしい。
国民生活センターに寄せられるクレームも、解約や価格、返金などが多いことを鑑みるとさも同じ体験をしている人も多いようだ。
すべての補聴器販売店に問題があるということではないが、介護離職を未然に防ぐため親の聴こえについて対策を打とうと動いたものの、トラブルに巻き込まれてしまっては元も子もない。介護離職対策はモノやサービスと絡むものも多いので、消費者として正しい情報のもと賢くなることが大切だ。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)