「ダブルケア」に直面している人は、約25.3万人。 そのうち女性は16.8万人。将来への「備え」が急務に
先日、オヤノコト.ステーション(市ヶ谷)に東京郊外にお住まいの30代のご夫婦が訪ねてきた。
彼らはいわゆるアラフォー世代だが、お話しを聞いてみると、ご夫婦は結婚して5年目、お子様はまだ3歳で、まさに育児の真っ最中だという。
そんなタイミングの今年の夏、クルマで1時間ほどのところに離れて暮らしていた奥様のお母様が要介護状態になってしまったというのだ。
まさに、「ダブルケア」である。
親を在宅で介護するのか、それとも施設に入れるのか、施設に入れるにしても、どのような準備や心構えが必要なのか?と言ったことに悩んで訪ねてこられたのだが、実際このような状況に陥る人は今後増えてくると言われている。
「ダブルケア」とは、介護と育児の両方が同時に進行している状態のことで、内閣府が平成27年に調査したデータによれば、「ダブルケア」に直面している人は約25.3万人でその内訳は、女性が16.8万人、男性が8.5万人、そして、その過半数が30代後半から40代前半の層で締めている(「育児と介護のダブルケアの実態に関する調査報告書」 内閣府男女共同参画局より)。
厚生労働省の調査では、2015年度の平均初婚年齢は男性で31.1歳、女性で29.4歳であり、平均出生時年齢も第一子で30.7歳、第二子で32.5歳だから、「ダブルケア」が今後増えるであろうという予測も頷けるだろう。
もちろん、労働人口が激減する中で、「ダブルケア」は政府の政策課題としても重要視されつつあるが、「ダブルケア」の増加は、何と言っても、晩婚化と出産年齢の高齢化によるものであり、1億総活躍社会の実現が謳われている昨今だが、女性の社会参加を促すにしても、育児、介護、そして仕事の鼎立がスムースに出来る社会を実現できるかどうか甚だ疑わしい。
仕事と介護の両立も大変だが、そこに育児まで加わるということになれば、精神的にはもちろん体力や経済面などの負担も最高潮に達する。これからの高齢化に向けて、それぞれがしっかりと「備え」をすることが大切になっていく。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)