介護付有料老人ホームの安全・安心な環境整備を進めることが必須
先日、老人ホームで痛ましい事件が発生した。 施設で働く職員が難病を患う83歳の男性を溺死させたという事件、ニュースでショックを受けた方も多いだろう。残念ながら、繰り返される老人ホームでのこういった虐待などの事件が、いっこうに減少する様子は見られない。
今回の事件も、「度々粗相をするので頭にきた」というのが理由のようだが、介護の仕事というのは高齢期を迎え身体的にも精神的にも衰えてきた利用者のケアをするのは当然のこと。
にもかかわらず、このような事件が起こるのは、介護の現場の人手不足やメンタルケア不足の問題が大きいと言われているが、これから先、ますます介護人材が不足することは言うまでもない。
外国人の受け入れも進んでいるが、残念ながらまだ人材の不足を補うには至っていない。
今後も、老人ホームの事件や事故がゼロになることを期待するのは厳しいと言える。
とすれば、我々は安心、安全な老人ホームを選ぶ目を養う必要があるだろう。
当然、行政も手をこまねいているわけではない。
厚生労働省は、指導に従わない悪質な有料老人ホームに対して、都道府県が業務停止命令を出せるよう、今国会に介護保険法などの改正案を提出する。
これまでは悪質な老人ホームに対して業務改善命令しか出せなかったが、2018年度からは、より厳しい対応できるようにする予定だ。
業務停止命令を出せるのは、入居者に対する虐待などがたびたび行われており、都道府県が度重なり指導しても改善しないケースを想定しており、無届けの老人ホームも対象に含めるとのこと。
介護付有料老人ホームは高齢化を踏まえて急増しているので、安全、安心な環境整備を進めることが必須である。このような介護保険の改正は歓迎すべき動きと言えよう。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
掲載の記事・調査データ・写真・イラストなどすべてのコンテンツの無断複写・転載・公衆送信などを禁じます。転載・引用に関する規約はこちら>>
- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)