改正か? 改悪か?
今年の5月に介護保険法が改正され、来年8月からいよいよ施行される。
果たして改正なのか、改悪なのか?これまで何度も指摘してきたとおり、2020年頃までには介護離職者が本格的に増加の一途を辿り、大きな社会問題となるだろうが、改正法では、要介護度が改善した自治体に対して交付金などを支給することが盛り込まれているため、意図的に要介護度の判定を厳しくする自治体が出てくる可能性があるからだ。
利用者の立場からすれば、今回の改正法の施行によってますます厳しい状況に追い込まれる可能性があることは間違えない。
ご存知の方もいると思うが、介護保険で介護サービスを受けるためには、前もって「介護認定」を受ける必要がある。市区町村の窓口に申請し、本人や家族が調査員から聞き取り調査を受けて一次判定が出る、その後、この一次判定をもとに「介護認定審査会」の二次判定を経て要介護度が認定される仕組みとなっているが、えてして高齢の親は要介護度を軽く判定して欲しいと考える。
それは、プライドもあれば、迷惑をかけたくないという想いでもあるのだが、家族からしてみれば、より多くの介護サービスを受けられるよう相応、あるいは重めの介護度を認定してほしいと望む。
だが、前述したように介護度が軽くなれば交付金などのインセンティヴが出ることになれば、より軽い判定をされるリスクが高まるのだ。 そもそも、自治体には財政状態が厳しいところが多いから、そういう懸念を持たざるを得ないのは当然と言えば当然なのだが、既に介護認定を受けている親をもつ子世代からすれば、「認定更新」の際にこれまでより軽い認定が下されることになれば、従来利用していた介護サービスが受けられなくなる可能性があることも大問題だ。
知人のケアマネからも「今後判定が厳しくなると、介護度が格下げされ、介護保険で賄えないサービスを全額負担で受け入れざるを得ない人が増えるだろう、そうなれば、家族負担が増え、結果介護離職が増えるのではないか?」という話を聞いた。
「介護離職に備える」ということは、常に国や制度の変化に注意を払っておくということでもある。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)