注意したい「誤嚥性肺炎」 口腔ケアや「話す」「歌う」ことで予防に
去る4月20日に名バイプレーヤーだった俳優の志賀廣太郎さんが71歳で急逝された。人生100年時代という今、71歳はあまりに若すぎる。残念でならない。
志賀さんがお亡くなりになった直接の原因は誤嚥性肺炎とのことだが、もともと昨年4月に脳梗塞で倒れ、6月に退院し、川崎市内の介護施設で療養しながらリハビリされていたものの、今年2月からは新型コロナウイルス感染症のこともあり、リハビリを中止し、理学療法士さんとの接触も避けていたという。
復帰に向けたリハビリ中だったことを考えれば、無念であったろうと思う。
さて、この誤嚥性肺炎だが、高齢者に多い。食道から胃に行くはずの食べ物や唾液などが気道内に入ってしまうことで起こる肺炎で、高齢になると喉の衰えから、嚥下機能が低下することからこの肺炎には注意が必要だ。
ちなみに嚥下機能とは「えんげきのう」と読み、食べ物を飲み込む機能のことをいうのだが、専門用語で語られることも多いので覚えておきたい。
弊社でも以前から、医科歯科大学の菊谷先生ら、専門家の先生方が一生懸命このことを訴え、口腔(こうくう)ケアの大切さを説いていることから、その活動を微力ながらサポートしてきたが、なかなか口腔ケアが一般の高齢者層に周知されてこなかったことには、じくじたる思いである。
ところで、厚生労働省の「人口動態統計月報年計」によれば、2018年で誤嚥性肺炎での死者は3万8462人となっており、70歳以上の肺炎患者の70%以上がこの誤嚥性肺炎だという。亡くなるのは特に85歳以上の男性と90歳以上の女性が多い。
症状としては、倦怠(けんたい)感や食欲不振、喉の違和感などのため風邪と勘違いされることが多々あるということも知っておきたい。
では、この誤嚥性肺炎を予防するにはどうしたらよいか?
やはり、前述した口腔ケアが大事なのだ。つまり、歯磨きやうがいなどで口の中を清潔に保つことはもちろん、人と話すこと、歌うことなども口や喉の筋肉が鍛えられるので誤嚥の予防につながる。
さらに、口腔ケアは認知症の予防にもつながっているといわれているが、それはよく噛むことで脳や筋肉に刺激を与えて認知機能を維持する効果があるからだとも。
人生100年時代を健康で生き抜くためにも、このような日々の小さな積み重ねを大切にしてほしい。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)