物価安い「海外移住」は一つの選択肢 1カ月の生活費が約10万円近く安くなる例 物価高騰や治安面でのリスクはある
新型コロナウイルス感染症が再びヨーロッパで拡大し、フランスでは外出制限が始まり、スペインでは全土に非常事態宣言が発せられ、ドイツやイタリア、ベルギーなどでも飲食店の営業時間の短縮や営業停止、映画館や劇場の閉鎖も行われている。
そんな状況下ではあるが、人生100年時代をどう生きるかを考えたとき、リタイア後に海外にロングステイするという暮らし方について考えてみたいと思う。
老後の不安はやはり、「健康」「住まい」「お金」の3つであることはいうまでもない。ある調査によれば50代の約8割がこの3つに不安を感じているというが、その不安を解消(軽減)するために物価の安い海外で老後を暮らすという人が増えている。
「老後のお金2000万円問題」は記憶に新しいが、老後の資金を考えたとき、物価の安い海外で暮らすことで生活費をより低く抑えることができれば、それはそれでメリットがあるといえるのだろう。
例えば、シニアの海外移住先として人気のあるタイの例を挙げると、夫婦の1カ月の平均的な生活費は15万円前後といわれている。日本では24万円(総務省)なので、タイの方が約10万円近く安い計算になる。
さらに、日本で暮らすとシニア夫婦の可処分所得は約19万円で、約4万円の貯蓄切り崩しが必要といわれるが、これもタイならば約4万円の余剰資金が出る計算になるのだ。
また、複数の人から聞いた話であるが、アジア諸国は「高齢者を敬う」という点では、まだまだ儒教の教えが残っているだろうか、日本とは違い平均的に高いレスペクトがあるという。
これらのことをかんがみれば、人生100年時代の今こそ、リタイア後に海外移住するというのもひとつであろう。
とはいえ、もちろん良いことばかりではない。新興国では物価が高騰するリスクもあるし、治安面でのリスクもある。現に、海外移住人気ナンバーワンのマレーシアでは2017年に3・7%も物価が上昇しているのだ。
さらに、言葉や文化の違い、食生活一つとっても国内とは異なる。例えば、外で日本食を食べようと思えばそれなりのコストがかかることも現実だ。
それでも海外移住は「人生100年時代」においては一つの暮らし方の選択肢にはなる。だからこそ、理想ばかりを追いかけて見切り発車するのではなく、現地に何度も足を運び、先輩移住者の話を訊くなど、事前の調査をしっかりとしておくことをお勧めしたい。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)