4月から改正「高齢者雇用安定法」施行 「60代でリタイア後は悠々自適に」の終焉
この4月から、改正「高齢者雇用安定法」(高年齢者等の雇用の安定等に関する法律)が事業者に対して施行されることとなる。
ニュースなどを通して既に知っている人も多いと思うが、これは70歳になるまで、安定した就業の機会を確保するように事業者に求める努力義務であり、罰則規定などはない。
もちろん、今後の改正によっては努力義務ではなく、正規に罰則を科す義務へと規定強化されていく可能性も否定できないといわれているが、いずれにしても、少子高齢化の加速による労働力不足を補うために改正されたことは間違いないだろう。
ちなみに少し補足的に説明すると、総務省の国勢調査によると日本の労働生産人口(15~64歳)は1995年時点で8716万人まで増えたが、その後は減少に転じており、2015年には7629万人となっている。それだけでなく、その先の予測を見てみると30年には6773万人、40年には5787万人、55年には4706万人とどんどん減って、60年には4418万人と、95年の半分近くになってしまう(将来推計は、国立社会保障・人口問題研究所から)。
となれば、否が応でも企業運営と消費活動に多大なるリスクを提供することになることは推して知るべしである。
つまり、人生100年時代を迎えてはいるものの、国の財政状況もますます厳しくなってきている今、50代、60代前半でリアイアして悠々自適に暮らすなどということは一部の富裕層やビジネスエリートだけの特権になってしまったようで、一般的にはひたすら働き続けなければならないかもしれない。
日本労働組合総連合会が全国の45~69歳の有識者1000人を対象に、2年前に実施した調査によると「60歳以降も働きたい」と思う理由の1位は「生活の糧を得るため」で60~64歳では81%、65歳以上では62・3%もあったというのだ。
今となっては、人生100年、リタイア後に(趣味や旅行を通して)どう暮らすか? などと悠長に言っていられない未来が待っているのかもしれない。
=本記事は、夕刊フジに連載しているものです。
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- このコラムを書いた人:「オヤノコト.マガジン」編集長 大澤 尚宏(Osawa Takahiro)
- 著書『そろそろはじめる親のこと』(自由国民社)